安全基地
子どもは産まれてから成長していく段階で、親や養育者のことを無条件で受け入れてくれる安全な場所、心の拠り所(安全基地)として成長していきます。
赤ちゃんの時から繰り返すお世話や、スキンシップの中で育った安心感や信頼感が親や養育者を心の拠り所にしていくのです。これを心理学では安全基地と呼び、安全基地があることで見知らぬ世界や環境にチャレンジして、成長していくための自立心や自尊心が育っていきます。また、安全基地(親や養育者)があるという無意識の安心感は、心の安定や成長に繋がっていくのです。
人見知りは絆ができた証拠
乳児期の頃の人見知りとは、知らない人や見慣れない人が近づくと、微笑まなくなり、恥ずかしがったり、怖がったり、泣いたり、母親にしがみついたりする反応のことです。人付き合いが苦手のような大人が使う意味とは異なり、赤ちゃんの人見知りは成長過程の一つです。
8ヶ月から2歳頃は、愛着の対象である特定の人(多くの場合母親か父親)と離れることの不安度が高い時期です。この頃、乳児が自分に関わろうとする見知らぬ人に対する不安や恐怖から、緊張や混乱の様子や、泣いたり逃げ出そうとする拒否的な行動が見られます。これが「人見知り」です。
見知った人と見知らぬ人を区別して反応する「人見知り」が表れる時期は、愛着が発達している一つの段階と考えられています。

お母さん・お父さんは赤ちゃんと毎日一緒に過ごし、赤ちゃんの気持ちを読み取って世話をしています。二人の間には、他の人には通用しないコミュニケーションが成り立っています。ですから赤ちゃんはお母さんと離れると、自分の気持ちを分かってくれる相手がいないので、不安になって泣き出します。つまり、お母さんとのコミュニケーションがしっかりとれているから、赤ちゃんは人見知りをするのです。
この時期に、人見知りが激しいと「育て方に問題があったのかも」と自分を責めたり、知らない人に挨拶ができないからと子供を叱ったりするお母さん・お父さんがいますが、育て方が悪いのではなく、きちんと育てているから「お母さん・お父さん以外の人はイヤ!」とメッセージを発しているのです。人見知りは対人関係の基礎になる愛着の発達の一つのステップですから、愛着がしっかり形成されていること、「お母さん・お父さんと仲良し」の証拠です。
人見知りの時期を経て、やがて他人ともコミュニケーションを取れる共通手段の言葉が発達して会話ができるようになると、愛着の発達は次の段階になり、拠り所の存在と離れる不安は減ってきます。
しかしアタッチメント障害をもつ子どもは、親や養育者を安全基地として見ていないために、親や養育者との間に通常では見られない反応がある事もあります。
- 抱きしめられていてもそっぽを向いている
- 離れる時や再会の時に視線をずらして近寄る
- 知らない場所(場所見知り)でも親や養育者を頼りにする(人見知り)素振りが無い
虐待を受けた子どもや、親や養育者との死別、最低限の世話はしてもらえるがコミュニケーションやスキンシップが極端に少ない家庭などに育った子どもは愛着障害を起こす確率が高いと言われています。子どもの愛着障害をそのままにしておくと、大人になってからも癒えないまま残り続けます。
子どもを受容し、要求に対してはその都度応えていってあげたいものですね。